近頃寒い日が続くので、お昼寝には陽のあたるカーペットの上か、リビングのママの横の椅子が温かくて一番です。 夕方は寝室のベッドカバーの中に隠れていると誰にもじゃまされずに安心して休むことができます。
たまにベッドカバーの中で寝ていると、リビングにいる家族に呼ばれることがありますが、めんどうなので、原則として返事はしないことにしています。 ほとんどの場合「どこにいたの?あまり出てこないから心配したのよ。」などと言ってなでられて終わりです。 わたしが家の中にいることは決まっているのですから、よけいな心配をした揚げ句、いい気持ちで寝ているところを呼びつけられてはたまりません。 最近では、”シャキ”という新しい缶詰の蓋をあける音か、”バリッ”と響く鰹節パックを開く音のどちらかが聞こえた時にだけ返事をすることにしています。
それでは、先月のお話しのつづきです。
夜になりました。 ママが夕食の支度をしているで、流しのところへ行き何か分けてもらえるのをまっていましたが何ももらえません。 わたしが兄弟と住んでいたうちでは、食事の支度をしているときに流しの下で待っていると、蒲鉾やちくわ、ときにはお魚の切れ端などをもらえました。 たとえ、その日のご飯がわたしの好きなものでなくても、待っていれば冷蔵庫から何か好きなものをだしてもらえるのでした。 仕方がないので、ママの足にすりよって甘えてみましたが、危なく踏みつぶされそうになりました。 それでもめげずに待っていると、「あなたのご飯はあるでしょ!」としかられてしまいました。 仮におなじご飯でも、新鮮な食材をみんなより少し先にもらうのは特別価値があります。 まな板の下でもらう切りたての蒲鉾の歯ごたえは格別です。 まして、ママの言うご飯とはさっきもらったキャットフードです。 そこで、みんなで同じものを一緒に食べるのがこの家の決まりなのだと思い、食事ができるのを待つことにしました。
ママが食卓の上に料理を用意しパパは食器を並べます。 タカシは子ども用の脚の長い椅子に座らされました。 わたしもどこかに座らなくては、と思いママの横の椅子に座りました。 ところが、三人はわたしに構わず食事を始めてしまいます。 だれもわたしに食事をすすめてくれないので、仕方なくニャーと言ってみました。 二回ほど呼びかけるとママがどうしたの?と聞きました。 わたしはママの顔をみてまたニャーと催促しましたが、「あなたのご飯はあるでしょ」と言われてしまいました。 とりつくしまがないのでパパのところに行ってニャーと催促してみました。 パパは面倒くさそうな顔をしながら「これ食べるかなー?」といってお肉を差し出しました。 わたしは、わざわざニャーと言ったことが損した気持ちになって部屋の隅に戻りました。
家族の会話にわたしのことが出てきます。 これからどうしようか?ということです。 わたしは自分のこれまでいた家に帰る道順がわかりませんから、「どうしようか?」と言われても困ります。
心配して聞いていると、ママとパパはしばらく相談して「飼い主がさがしていれば電柱に張り紙が出るだろうから様子をみよう」ということで意見がまとまりました。 すぐに「飼い主が現れないこともあるから何か名前をつけよう」などと言っているのが聞こえてきます。 パパが「”ミー”というのはどうかな?」といいましたが、ママは即座に「パパは小さい頃自分の家にいた猫の名前しかいわないんだから」と反対して「こねこのねる」という絵本のから「ねる」と言うなまえを提案してくれました。 もともと「ネン」とわたしを呼んでいたタカシにも言いやすいということで、わたしの名前はとりあえず「ねる」ときまりました。
つづく
わたしの近影です。
ベランダに咲いていた
シャコサボテンをバック
に写してもらいました。