3 月 の ネ ル 物 語


 蕨の3月は雪の日で始まりました。 今日は沈丁花と雪柳の写真を撮るつもりでしたが、朝起きて外を見てびっくりです。
 ところで、毎年3月には市から蕨市民に「生涯学習カレンダー」が配られます。
 このカレンダーは4月からはじまり、保険センターの健康診断日、小中学校の始業式や期末試験の日、図書館のお楽しみ会の予定まで載っていてとても便利なものです。 去年のカレンダーも最後のページになりました。

今月もネルの遺稿を掲載します。

(ネルさんとタカシとトルストイ)
 わたしが家族と一緒に住むようになって3年ほどたった頃です。
天気が良ければ、ママとタカシは毎日ひなたぼっこに行ってしまいます。 わたしは、たいていお昼寝をして過ごしますが、ネコの友達がいないのでたまに誰かと遊びたくなります。 ママは何が忙しいのか良くわかりませんが、いつも忙しいと言っては遊んでくれません。
あまりしつこくねだると蹴飛ばされることもあるので要注意です。 いつも暇なのはタカシですが、本来わたしはあまり子どもが好きではありませんから、どうしても退屈で仕方のないときだけタカシと遊んでやることにしました。
 タカシは、積み木やジグソーパズルとかプラレールで遊ぶのが好きなので、折角わたしが退屈で遊んでやろうと思ったときにもジグソーパズルなんぞを始めたりします。 そんなときは、ジグソーパズルの上に行って横になると良いのです。 タカシは「ネルどけ!」などと生意気なことを言いますが、簡単には退いてやりません。 すぐに退いたりすれば軽くみられて、地位が上のものとしての示しが着かなくなります。 そのうちにタカシはわたしを叩いたりしますが、そんなときは後ろ足でパズルを蹴って尻尾ではねとばしてやれば良いのです。 タカシはフニャーと泣いてママのところへ逃げて行きわたしの勝ちです。 こんなときはママがやってくる前に逃げないといけないのですが、退屈が吹っ飛んでスカッといい気分です。 積み木はもっと簡単です。 お城が完成した頃を見計らって横に行き、体を擦り付けるか尻尾をふれば落城です。 プラレールはレールの上で寝転がるだけでいいのです。 電車が来ても退いてはいけません。
 こんな風に、それなりに毎日を楽しくすごしていました。 そんなある日、九州に住んでいるおじいさんとおばあさんが仙台へ七夕見物に行った帰り、わが家へ一泊することになりました。 わたしはおじいさんもおばあさんも大好きです。 どちらも食事の時にわたしの好きなお魚をわけてくれたり、毛並みの良いきれいなネコだと誉めてくれたりします。 特におじいさんはガラス戸を開け放しにすることが多いので、九州の家に行ったとき外へ散歩に出たければおじいさんの後を着いて回ると良いのです。(わたしは迷子になると言われて外出禁止です) 今度はそんな二人が仙台を回って立ち寄るので、きっとわたしの大好きな笹蒲鉾をおみやげにしてくれるに相違ありません。
 お昼頃、おじいさん達がわが家へ到着しました。 チャイムの音にタカシもわたしも玄関に走って行きました。 蒲鉾を楽しみにしているわたしは一目散です。
 家に入るなり、おじいさんが「タカシおみやげだぞ!」と言いました。 わたしは、次に「ネルさんおみやげだぞ!」と呼ばれると思って待ちましたが、呼ばれません。 「なんだ、タカシと一緒のおみやげなのか」と思いましたが、箱の中には何と亀がはいっていました。 おじいさん達が仙台で見つけて買ってきたのだそうです。 タカシは大喜びです。

 みんな亀のことで話題がもちきりです。 パパは早速水槽を出して石を敷いて水を入れ、ママは亀の名前を考えています。 おじいさんとおばあさんは隣の部屋で着替や荷物の整理を始めました。 わたしは、亀なんかより早く笹蒲鉾を食べたいと思いましたし、みんなが亀のことばかり考えているみたいで、段々つまらない気分になってきました。 わたしは、タカシが亀を畳の上で歩かせているのを見ていましたが、亀がわたしの方に向かってきたので手で叩いてやりました。 すると、あわててパパがやってきて亀を水槽にもどし、「亀が怪我をするといけないからネルにさわらせたらいけないよ」とタカシに言うのです。 亀なんて今日来たばかりなのに大事にされてずるいと思いました。 わたしの方がずっと前から家族なのです!
 ママは亀に「トルストイ」と名前をつけました。 聞くところによると、トルストイはロシアの作家で「罪と罰」とかたくさんの小説を書いた有名な人で、英語の亀(TORTOISE)トータスの音がトルストイと似ているというです。 パパは「亀とトルストイの小説の重い感じが合っているね」と言いますし、みんなで「良い名前だ!これしかない!」なんて言い合っています。 わたしの名前の元になった「こねこのねる」の著者のプルーナと言う人の方が、トルストイなんかよりもっと有名に違いないと確信しましたが、それでもわたしは、今日来たばかりの亀の分際でみんなに可愛がられて生意気だと思いました。




ご近所のヤナセさんのお宅のロビさんは小さい頃からだが弱くて心配しましたが、すっかり元気な腕白ネコに育ちました。


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