8 月 の ネ ル 物 語

 今年の関東地方は8月に入ってもぐずついた天気が続いています。 夏の花、ひまわりも曇り空のバックになってしまいました。
 旧中山道を宿場資料館から北に3分ほど歩くと、昔からの酒屋さんの角に「地蔵の小道」という石の道しるべが建っています。 この角を右に曲がるとすぐに三学院という大きなお寺があります。
 三学院の参道にはお地蔵さんが何体かありますが、それとは別に山門の脇には 元禄7年に建立された という身の丈七尺余りの大きな「子育て地蔵」があります。
 7月の最後の日曜日、三学院の前を通りかかると子育て地蔵の小屋の脇に、茶虎の子猫が二匹捨てられていました。 二匹とも面倒をみることはできませんし、かといって一匹だけ連れてゆけば残った方がかわいそうで、とうとう拾うことができませんでした。
幸いにお地蔵さんを守っている方が子猫の面倒もみてくださっているので、カラスや野良犬に襲われなければしばらくは大丈夫そうでした。 昔の捨て子の様に子育て地蔵の横に捨てた飼い主の気持ちもわかるのですが・・・・・ 子猫達が新しい良い飼い主と巡り会えることを祈ります。


今月もネルの遺稿を掲載します。 読んでやってください。


(ネルは美人猫)
  8月は、毎年長野へ行く季節です。 長野では叔父さんと叔母さん、それにタカシの従姉妹のエリさんに会えるのです。 わたしを大好きなのに慣れていないエリさんは、おっかなびっくりです。 私も相手が落ち着いていないと安心できないので、何となく構えてしまいます。 いつも悪いとは思うのですが、これは仕方のないことなのです。
ある年、叔父さ一家が私と遊んでくれた時のことです。 叔母さんが「ネルさんは美人ネコよね。」と言ってくれました。 すると叔父さんが「エ! ネルは美人ネコなの?」と言うのです。 叔母さんはエリさんと私に「そうよ、目が大きくて美人ネコよね!」と言ったあと、叔父さんに「決まっているじゃない。 ネルさんは美人ネコなのよ! 見ればわかるでしょ。」と言ってくれました。
  そうなのです! 世の中には決まっていることと決まっていないことの二種類しかないのです。 そして、私が美人ネコなのは決まっているのです。 ママだって「ネルさんは白い靴下をはいたみたいに手と足の先だけ白いのね! こんなネコはいないわ。」と言っているのです。
エリさんだって叔母さんだってママだって、みんなそう思っているのです。 なのに優しい叔父さんがそんな決まっていることを知らないなんてガッカリしてしまいました。 タカシもパパもこんな当たり前のことがよくわかっていないのです。 わたしの周りの男の人はこんなことが何でわからないのでしょうか? その点、おじいさんとおばあさんは私のことを美人ネコとだわかってくれています。 さすがに年の功とは言ったものです。

 これは本当は秘密なのですが、わたしは茶トラなのに、お腹のところはダイヤモンドの形に白いのです。 こんな猫は滅多にいるものではありません。 神様はよくもこんな風に美しくしてくれたものだと思います。
田中マキ子さんとかいう人が、こんど総理大臣になった人のことを「鈍感」と言ったそうですが、タカシとパパをはじめとして鈍感はいけないことだと思いました。


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