
5月の日差しの下、街路樹の「はなみずき」が咲きました。 桜のあとを追うように咲くアメリカ原産の木、はなみずきは近年すっかり定着してツツジとともに初夏の訪れを教えてくれる花になりました。
今月もネルの遺稿を掲載します。 読んでやってください。
(さようならトルストイ!)
私は鰹節が大好きです。 ところが亀の分際でトルストイ(1998年3月のネル物語参照)も鰹節が好きです。
トルストイなんか「亀の餌」ばかり食べていればいいのに生意気です。(トルストイなんていなければ全部私がもらえるはずなのに!)
ママが水槽の蓋を開けると、首を伸ばして口を開けてご飯を要求します。 ママは、トルストイの仕草を「かわいい」といって気に入っているみたいです。
トルストイが、家族みんなにかわいがられるのは許せません。 トルストイは、黒くて汚い色をしています。 鳴いたりしません。 手触りも石みたいで冷たいです。 手や足や尻尾もザラザラしていて、全然可愛くありません。
私は気に入らないことがあると、私の方がえらいことを示すために、トルストイの水槽の蓋の上に乗ったり水槽を叩いたりしていました。
ところがある初夏の日、トルストイをどこかの池か川に放してやることになりました。
夏になって、水槽の水を頻繁に替えてやらないと水が腐ってしまうのと、「亀の排泄物にはばい菌がいて幼児の健康に良くない。」と言うことが新聞に載っていたからです。
タカシは「僕は、はじめてトルストイと目があった時から友達なんだ!」と言って抵抗しましたが、パパが放すことを決めてしまいました。 「トルストイは狭い水槽の中でかわいそうだから、放してあげなくてはいけない」と言われて、タカシは泣く泣く我慢することになったのです。
家族でトルストイを放す場所を話し合った結果、以前遊びに行ったことのある荒川遊園がいいと決まりました。 その頃、荒川遊園には亀のたくさんいる大きな池があって、遊びに来た人が餌をくれるのでした。
私は、もともとトルストイなんて大嫌いですから大賛成です。 梅雨も近い晴れた休日、トルストイは紙の箱に入れられて我が家を出てゆきました。
私は、トルストイがいなくなり清々するかと思っていましたが、家族と別れて見知らない所へひとりで行かされるトルストイが少し可愛そうになって、ちょっと淋しい気持ちになりました。
その後トルストイがどうしたか知りませんが、仲間ができて幸せに暮らしていればいいなあと思っています。
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