10 月 の ネ ル 物 語


 コスモスの咲く秋になりました。 宇宙と同じ名前を持つコスモスは、秋になるとお隣の浦和市の秋が瀬公園など蕨市からそれほど遠くない、荒川の河川敷にたくさん咲きます。


 今月もネルの遺稿を掲載します。 読んでやってください。


(お隣)
 今の家に引っ越す前、お隣だったNさんのところへベランダをつたわって遊びに行っていました。 Nさんのお宅には犬がいたのですが、わたしは強いのでうなり声でおどかせば大丈夫でした。 Nさんが飼っていたのはペキニーズという種類の小型の犬で、わたしより少し大きいのですが、わたしの方が敏捷で喧嘩しても負ける心配はありませんでした。
 ごく希に、Nさんの犬が我が家のベランダへくることもありましたが、それは滅多にないことで、 大抵はわたしがNさん宅へ行って、犬のおもちゃを貸してもらったり、ジャーキーをもらったりしていたのです。
 Nさんは、わたしのことを可愛がってくれて、遊びに行っても怒らずに犬のおやつのビーフジャーキーなどをくれたりしました。  我が家ではタカシがおもちゃをたくさん買ってもらえるのに、わたしは鈴の入ったボールとネコジャラシくらいしかおもちゃを買ってもらっていません。 なのに、タカシはわたしのおもちゃはもちろん、首につける赤いヒモまで横取りしたりするので、わたしは自分専用の遊び道具がありませんでした。
 そんなわけで、ほとんどおもちゃを買ってもらえないわたしは、お隣の犬のおもちゃが大好きになりました。 ほんとうのウサギの毛でつくったネズミの形のおもちゃです。 ある日わたしは、犬の持っているおもちゃがとってもうらやましくて、我が家まで持って帰ってきてしまいました。
 わたしが、口にくわえて持ってきたおもちゃで遊んでいると、ママが「ネルが変なものをくわえている」と言って取り上げました。 わたしは部屋の隅へ逃げましたが、追いつめられて取り上げられてしまったのです。 ママは、毛皮のおもちゃを見るとすぐに、わたしがNさんの家から持って来たものだと見抜きました。 ママは、わたしを叱ってからNさんにおもちゃを返しに行きました。
 数日後、Nさんは「ネルさんが好きなようだから」といって新しい毛皮のおもちゃを買ってわたしのために持ってきてくれました。 ママは恐縮して「ありがとうございます。」「ネルさんよかったね!」と恐縮した様子です。
 わたしは、新しいおもちゃで遊びましたが、何となく前に取ってきた毛皮の方が良いような感じがしてなりません。 何日か新しいおもちゃで遊んだあと、Nさんの家へ遊びに行ったときにまた犬のおもちゃを持ってきてしまいました。 だって、古い毛皮のほうが、いろんな匂いがついていてい魅力的なのです。
 ママは、またそれを見つけてNさんに謝りに行きましたが、Nさんは「そんなに好きならば古い方もあげましょう」と言ってわたしにくれました。
(今月のわたしの写真は、Nさんが部屋から網戸越しにわたしを写してくれたものです。
手前はNさん宅へ遊びに来ていたご近所の猫、マルです。)



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