2 月 の ネ ル 物 語


 暖冬と言われる今年、蕨市立図書館の紅梅も例年より少し多くの花を付けているようです。
寒いことが嫌いなのは猫も人間も同じですから、暖冬はそれなりに結構なことですが、寒いはずの冬が寒くないと「本当にこれでいいの?」となんだか不安になってきます。
 季節が本来の姿でなくなると、日本が日本でなくなってしまうような気がします。

 今月もネルの遺稿を掲載します。 読んでやってください。


(聞き耳)
 わたしたち猫は、耳だけ動かして人間の話を聞きます。
 良いはなしだったらすぐに飛んでいってチャンスを逃さないようにしなくてはなりません。 悪い話だったら早く逃げなくてはなりません。 それは最近、人間の世界でよく言われる「情報化」と言うことではないかと思うのですが、わたしたち猫にとっては、ずっとずっと昔から当たり前のことなのです。 ちなみに、耳だけ動かすのは、体ごと動かす必要の無いときは耳だけ動かせば事足りるからです。 不必要な運動をするべきではありません。 この点でも、耳の動かせない人間と比べて猫がいかに合理的で、優れた生物かと言うことがわかります。

 さて、最近のこと(注、1995年頃)ですが「1ドルが80円くらいになったけど、来年はもっと安くなるかも知れない」などと家族が話していることを聞きました。 わたしは「ドル」「ドラ」に聞こえたので、どこかの野良猫が襲って来てはいけないと思って、話に耳を傾けました。 もちろん動かすのは耳だけです。
 でも、良く話を聞いてみるとアメリカという国のお金の話題でした。 わたしには関係ないかな?とも思いましたが、折角耳を向けたのでそのまま聞いていると何でも、わたしの生まれるまえは1ドルが300円以上もして、それが上がったり下がったりしながらだんだん安くなったのだそうです。 パパがまだ若い頃、「ドル」が高くなったり安くなったりして外国から機械を買うのに困ったことがあるそうです。 そして、今ではドルが80円よりもっと安くなったりしているのだそうです。
 考えてみると、わたしの食べているドライフードや缶詰は外国製が多いので、外国のお金が安くなると日本の同じお金でもっと上等の食事が買えるはずです。 「健康に良い」なんて言われて、おいしくないのに食べさせられる「ドライフード」と同じお金で「モンプチの缶詰」が買えるんだったら、わたしの食事もグレードアップするはずです。 鰹だって外国でとれるから、毎日好きなだけ鰹節を食べられるようになるかもしれません。 何しろ日本のお金が4倍になったのです!
 でも、良く考えてみたら、何もしないのに自然にお金が4倍になるなんておかしな気がします。 街も、木も、山も、わたしの周りにある世界はそのままなのに、外国の人からみてねだんが変わるなんて良く理解できません。 わたしたち猫にとっては、美味しい食べものは常に同じだけ大切です。 暖かくて陽の当たる快適な場所もいつも同じだけありがたいものです。 これらは不変の価値がありす。 人間はお金という物差しで大切さを決めるようですが、物差しが伸び縮みするなんて何だか変だとおもいました。


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