4 月 の ネ ル 物 語


 昨日の雪に打たれたにもかかわらず、満開の桜の花は4月の初日を飾ってくれました。


 今月もネルの遺稿を掲載します。 読んでやってください。


(わが家へ来る前のこと)
 わたしがうちへ来て、家族になった経緯は「最初のネルの小屋」に書きましたが、その前のことはよく覚えていません。
 残留孤児の人たちが、子供の頃の記憶や持ち物をてがかりに、肉親を捜そうとして苦労していますが、わたしにも本当のお母さんがいるはずです。
 微かな記憶には、お母さんに体を舐めてもらった感触があります。 ママに撫でてもらうと心がやすらぐのは、きっと本当のお母さんが赤ちゃんのわたしを舐めてくれたのと同じ感じがするからだと思います。 お母さんもわたしと同じ茶トラだったような気がします。
 ネコの場合は血液鑑定なんてのもありませんから、わたしはもう二度と本当のお母さんに会うことはないと思います。
 我が家の家族は、わたしのことをひどく扱ったりはあまりしません。
でも、たまに本当のお母さんがいたらいいなあと思うこともあります。 タカシと喧嘩して、わたしだけが叱られる時とか、ちょっとして悪戯をしてパパにこっぴどく叩かれる時とか、家族旅行に行くのにわたしだけがお留守番の時です。 そんなとき、「わたしだけみんなと違うんだ」と感じます。
 ご飯のお皿が空になって、お腹がすいて鳴いているときに、家族がわたしの言葉をわかってくれなくて「ネルうるさいぞ! 静かにしろ!」と怒鳴られるたりすると、本当のお母さんがいたらわたしの言葉がわかってくれるのに、と悲しくなってしまいます。
 わたしが子猫のとき、迷子になり離ればなれになって、わたしのお母さんはきっと心配したに違いありません。 せめて、車にひかれるもなく、いまこんなに大きくなって人間の家族になって元気でいることを知らせてあげることができればなあ! と思います。



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