湿った空気の日が多くなりました。サッカーワールドカップが始まり、埼玉スタジアムでも試合がありますが、一体誰がチケットを持っているのか?我が家にはあまり関係なさそうです。
それよりも、有事法制だの核保有可能発言だの、日本にはもう関係ないと思っていた戦争が身近なものに感じられ、なんだか不安な気持ちになってしまうこの頃です。
今月もネルの遺稿を掲載します。 読んでやってください。
(おもちゃ)
ときどきベランダを越えてお隣のNさんの家を覗きにゆくことがあります。子供のいないNさんの家にはペキニーズという種類の犬がいて、大切にされているのです。その犬は、おやつにジャーキーを買って貰ったり、おもちゃも与えられています。
我が家では、おもちゃなんて買って貰えません。自分用のおやつなんて、もちろんありません。おもちゃはタカシのを一緒に使わせてもらうだけだし、おやつは家族の食べ物をわけてもらうのです。わたしは、ときどきベランダ伝いにお隣へ行って、窓から部屋の中を覗きます。
Nさんの奥さんがわたしに気づくと、部屋にいれてくれることがあります。ペキニーズは小型の犬で、わたしだって喧嘩に負けないぐらいの大きさなので怖くはありません。わたしは、たまにNさん宅にいれてもらい、ビーフジャーキーのおやつやをもらったり、おもちゃを貸して遊ばせてもらいます。
おやつは、家に帰るときに持って帰っていいのです。食べきれなかったり、後で落ち着いて食べたいときは、くわえて帰って我が家で食べます。(ママはNさんに会うと、お礼を言っています。)
ある日、ペキニーズがウサギの毛皮で作ったおもちゃを持っていました。わたしは、そのおもちゃが気に入って、貸して貰って長いこと遊んでいましたが、とうとう欲しくなって我が家へ持って帰りました。ママは、すぐにおもちゃに気づいてわたしから取り上げ、Nさん宅に返しにゆきました。
ママはわたしにお説教をして頭を叩きました。ママがいうには、余所の家のものを勝手に持ってくると「どろぼう」になるのだそうです。
わたしは、家にいても毛皮のおもちゃがなくて退屈なので、またNさんの家で遊ばせてもらいました。そして、また持って帰りました。何遍おこられても、好きなものはすきなのです。三度目にママがおもちゃを返しにいったとき、Nさんの奥さんが「ネルさんがそれほど大好きなおもちゃならあげましょう」といってわたしにくれました。
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ネルの小屋ばっくなんばー
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